関西自然保護機構の雑誌「地域自然史と保全」43巻(2)に、琵琶湖のヨシ原バイオマス調査に関する論文が掲載されました。

原著

参加型刈り取り調査と群落高法による琵琶湖ヨシ群落の冬季地上部現存量の推定―「ヨシ刈り活動」における炭素回収量の簡易推定手法の開発― 林 竜馬・山田直明・竹田勝博・太田俊浩

こちらは、琵琶湖博物館の学芸員さん主導のもと、滋賀県琵琶湖環境部、「葭留」、「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」の協働で実施された、バイオマス調査の研究をまとめられたものです。

2017年当時、ヨシの保全による成果は、県が唯一公表する面積でしか評価されておらず、他の科学的評価が期待されていました。私たちは、2007年のリエデン発足のころから10年以上にわたり、琵琶湖の環境保全を目的としたボランティア活動組織「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」の皆さんと、ヨシ刈りボランティアを行ってきました。(※新型コロナの感染拡大防止の観点から、現在はネットワークでのヨシ刈りは中止しています)

そうした中で、目に見える評価・効果の「見える化」は、活動を広げていく上で念願でもありました。

間伐等の森林保全が炭素吸収・固定量を指標として全国的に推進されていることを受け、私たちは、ヨシ材においても炭素を植物内に回収する効果があり、同様に炭素回収量として評価できると考え、研究者と共に冬のヨシ原のバイオマス調査に取り組みました。

ヨシの「高さ」「密度」「重さ」「太さ」「炭素量」を3年間に渡り測定し、蓄積したデータから炭素回収量を数値で示す手法を構築しました。これにより、ヨシ刈り活動の効果が、全く新しい角度から数値評価することが可能となったのです。

その後、この取り組みは学識者で構成する滋賀県ヨシ群落保全審議会で高い評価をいただき、2019年末には産学官で「刈り取り面積」×「ヨシ高さによる換算値」でCO2回収量を算出するツールを開発し「ヨシ刈り活動によるCO2回収量の算定ツール」として滋賀県ホームページで公開されています。

振り返れば、今から5年ほど前の2017年2月25日(土)、私たちはヨシ原で新たな挑戦に向けて、期待を胸にしていました。午前中のヨシ刈りボランティアを終えて、午後から第1回目のバイオマス調査がスタートするためです。

ヨシでびわ湖を守るネットワーク会員の有志も、一緒に取り組んでくださいました。いつもヨシ刈りをする伊庭内湖・西の湖に加え、比較検証のため普段人の手が入らないヨシ原でも調査を行いました。ヨシの痩せ具合や密度など、それだけでも毎年のヨシ刈りボランティアの手応えを感じました。

調査は3年間続き、参加者は入れ替わり立ち替わり、毎年参加してくれる強者もいました。そうした日々が積み重なり、たくさんのご協力をいただき、私たちはこの新たな測定手法を結実させることができました。

測定手法を構築した後も、精度をあげるためバイオマス調査を小規模ながら継続して実績をつくり、さらに県の各団体に活用してもらえるようになればと願っています。早くヨシ原に帰れる日が来ますように。

■掲載

メディア:「地域自然史と保全」 43巻(2)

発行:2022年2月4日 関西自然保護機構

掲載:原著

参加型刈り取り調査と群落高法による琵琶湖ヨシ群落の冬季地上部現存量の推定―「ヨシ刈り活動」における炭素回収量の簡易推定手法の開発― 林 竜馬・山田直明・竹田勝博・太田俊浩